映画の中のジュエリー
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『タイタニック』-碧洋のハート


ストーリー
 1912年、イギリスのサウザンプトン港から処女航海へと出発した、豪華客船タイタニック。
 一等席の乗客、ローズ(ケイト・ウィンスレット)は上流階級の令嬢で、母親の決めた婚約者キャル、しいては厳格な社交界の慣習に息をつまらせていた。 一方、三等船客のジャック(レオナルド・ディカプリオ)は、新天地アメリカに夢を抱く、自由奔放な画家志望の青年。
 まったく身分の違う二人が運命的な恋に落ち、
様々な障害の中、強い絆で結ばれていった。
 しかし、航海半ばの4月14日、タイタニック号は氷山と接触、刻一刻と冷たい海の中へ沈んでしまう・・・。
監督:ジェームス・キャメロン  1997年アメリカ 
ローズ(ケイト・ウィンスレット)


※以下の内容は、映画の詳細について触れてあります。ネタバレ覚悟でご覧下さいね。


碧洋のハート(ハート・オブ・ジ・オーシャン)

碧洋のハート(ハート・オブ・ジ・オーシャン)イメージさて、超大作『タイタニック』ですが、物語の隠れた主人公はというと、稀代のブルーダイヤモンド、"璧洋のハート(ハート・オブ・ジ・オーシャン)"です。

そもそも映画の始まりは現代、12回目を迎えるタイタニック号引揚げ作業にて。タイタニック号最大の秘宝といわれる"碧洋のハート"を身につけたローズのスケッチ画が発見されます。今では老女となったローズ、絵のモデルが自分だと名乗り出て、物語は回想シーンへと結びつくというわけ。

ローズはこのネックレスを、婚約者キャルから贈られます。(彼は大資産家の息子で、とにかくや〜な感じの男性。)それはそれは価値の高い、深いブルーのダイヤモンド。自殺を考えてしまうほど嫌がっていた政略結婚、でもさすがにこのネックレスを見たときは、ローズもうっとりしてましたね(笑)。

印象的なのが、ジャックがローズのスケッチを描くシーン。美しいローズの裸体に唯一つまとわれたのが、この大粒のブルーダイヤモンド。二人の心が通い合う、とてもすてきなシーンです。

その他、宝石泥棒の罪をなすりつけようと、キャルがジャックのポケットにしのびこませたり、いろいろ活躍(?)するこのダイヤ。そしていよいよタイタニックが沈み出し、船内はパニック状態へ。果たして、"碧洋のハート"はどこへ行っちゃったのでしょう?

それが明らかになるのは、映画も終りに近いシーン。舞台は現代に戻っていて・・・・・・実はローズが持ってたりするんですねぇ。当時、タイタニックが沈み出したとき、いったんは救命ボートに乗りこんだローズ。しかし海に下ろされる前に、ジャックがいる船に戻ってしまいます。悲しいかな、最終的にジャックは冷たい海に沈んでしまいますが、彼の意志を受けて、生きることを決意したローズ。助けにきた船の中、タイタニックが沈む前にキャルにかけられていたコートの中でネックレスを発見します。なんとそこでは、キャルが彼女の命よりも、そのペンダントを探していたんですから、やっぱりいやな奴(笑)。結局、ローズは毛布にくるまっていたため、気付かれずにすみました。

そしてラスト、ローズはそのネックレスを取り出し、海に投げ捨てます。その名の通り、海に還った"碧洋のハート"。そして、ローズは息をひきとり、安らかな眠りの中で、ジャックと再び結ばれるのでした。



“碧洋のハート”と“ホープ”ダイヤモンド

“碧洋のハート”と“ホープ”のおかしな関係

この“碧洋のハート”のモデルになったのが、現在ワシントンのスミソニアン博物館に所蔵されている『ホープ』であると言われています。持ち主を不幸へと導いた、「呪いのホープ」として有名なブルー・ダイヤモンド。(『魔性のジュエリー』ホープ参照)

実際、数々の恐ろしい伝説に関しては、史実と人々の噂が入り混じっているとも言われていますが、数奇なエピソードのある宝石というのには間違いないでしょう。

映画始めの引き揚げシーンで、皆が躍起になって探している“碧洋のハート”についての詳細が語られています。「ルイ16世が所有していたブルー・ダイヤモンドで、かつてフランス革命当時ルイ16世が首からぶらさげていたものを、彼が処刑されたときに、首と一緒に取り外され、それは後にハート型に形を変え、今では”碧洋のハート”と呼ばれる大きなダイヤモンドとなった」とのこと。

これだけ聞くと、この “碧洋のハート” = 姿を変えた“ホープ” なのかな?と思いそうになるのですが、また別のセリフでは、「今では、ホープダイヤモンドよりも価値があるものでしょう」なんてことも言われています。 むむむ、これはちょっと無理がありますねぇ。ルイ16世に所有されていたものこそ、“ホープ”であって、これでは“ホープ”が2つあることになってしまいます。どうせなら、 “碧洋のハート” こそ“ホープ”ダイヤですよ、という設定に統一していた方が良かったかもしれませんね。

さらに、“ホープ”ダイヤは19世紀初期に、現在の形=オーバルカットにリカットされてますから、タイタニック航海(1912年)の100年ほど前には、もうハート型ではないのです。ちょっと混乱してしまう話ですが・・・・。そのあたり、もうちょっと丁寧に作りこんでほしかったな、なんて思いますね。

“タイタニック”と“ホープ”を結びつけたのは?

さて、次々と持ち主を変えてきた“ホープ”ダイヤモンド、現在はスミソニアン博物館に収まってることは既に述べましたが、それはニューヨークの宝石商ハリー=ウィンストンが寄贈したから。彼の前にこの石を手にしたのは、アメリカの大新聞『ワシントンポスト』のオーナーの息子エドワード=マクレーン氏、彼がこの石を妻に買い与えたんですね。

このマクレーン氏、実は「“ホープ”ダイヤとともにタイタニックに乗船して亡くなった」と言われていたのです。ここで、“ホープ”もしくは“碧洋のハート”がタイタニックと自然に(?)結びつくというわけ。実際には、彼は1941年まで生きていたということで、“ホープ”も海に沈むことはなかったのですけれど。

“碧洋のハート”と“ホープ”の微妙な関係はおいといて、ブルーダイヤモンドを軸にストーリーを展開させるなんて、なかなか粋なはからいではないかと思いますね^^。



ちょっとここだけの話

今まで、物語の中の“碧洋のハート”に焦点を置いていましたが、実際、映画で使われたネックレスについて少し言及しておきましょう。タイタニックブームによって、レプリカがあちこちで販売されましたね。値段も素材も様々、今でも、ネット通販で購入できることでしょう。

映画で“碧洋のハート”を観たときの正直な感想は。。。。「おもちゃっぽい!」というものでした(笑)。「そんなはずがない!こんなに“光らない”ダイヤモンドなんて・・・!一体、何カットしたらこうなるんだ?それか、余程、ダイヤの質が悪かったのか・・・?」 そりゃ、本物のプルーダイヤを使うのは120%不可能でしょう。100歩ゆずって、ガラスを使っていたとして(勝手な推定)、それにしても・・・・もうちょっと高級感があるように作れなかったのかしらん。200歩ゆずって、どうしても現物では不可能だとしても、せめてCG処理で光らせるなり、ハリウッドテクを使えるはず!それとも、船にお金をかけすぎて、小道具の宝石にまで手がまわらかなったか!?他のシーンがあまりにすばらしかったため、ちょっと不思議に思いましたね。 皆さんは、どう思われましたか?

最後に、ひとつ。さすがに、あんな大ぶりなデザインのジュエリーをつけこなすには、年季がいりましょうね。10代、20代ではまず無理といっても過言ではないでしょう。それでも、ケイト・ウィンスレットはなかなか検討しておりました。「あまりにもぽっちゃり型」などという声も多かったようですが、あれ以上細身の女優さんだと、それこそ100%おもちゃに見えてしまったのではないかと思われます。


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