この“碧洋のハート”のモデルになったのが、現在ワシントンのスミソニアン博物館に所蔵されている『ホープ』であると言われています。持ち主を不幸へと導いた、「呪いのホープ」として有名なブルー・ダイヤモンド。(『魔性のジュエリー』ホープ参照)
実際、数々の恐ろしい伝説に関しては、史実と人々の噂が入り混じっているとも言われていますが、数奇なエピソードのある宝石というのには間違いないでしょう。
映画始めの引き揚げシーンで、皆が躍起になって探している“碧洋のハート”についての詳細が語られています。「ルイ16世が所有していたブルー・ダイヤモンドで、かつてフランス革命当時ルイ16世が首からぶらさげていたものを、彼が処刑されたときに、首と一緒に取り外され、それは後にハート型に形を変え、今では”碧洋のハート”と呼ばれる大きなダイヤモンドとなった」とのこと。
これだけ聞くと、この “碧洋のハート” = 姿を変えた“ホープ” なのかな?と思いそうになるのですが、また別のセリフでは、「今では、ホープダイヤモンドよりも価値があるものでしょう」なんてことも言われています。 むむむ、これはちょっと無理がありますねぇ。ルイ16世に所有されていたものこそ、“ホープ”であって、これでは“ホープ”が2つあることになってしまいます。どうせなら、
“碧洋のハート” こそ“ホープ”ダイヤですよ、という設定に統一していた方が良かったかもしれませんね。
さらに、“ホープ”ダイヤは19世紀初期に、現在の形=オーバルカットにリカットされてますから、タイタニック航海(1912年)の100年ほど前には、もうハート型ではないのです。ちょっと混乱してしまう話ですが・・・・。そのあたり、もうちょっと丁寧に作りこんでほしかったな、なんて思いますね。
さて、次々と持ち主を変えてきた“ホープ”ダイヤモンド、現在はスミソニアン博物館に収まってることは既に述べましたが、それはニューヨークの宝石商ハリー=ウィンストンが寄贈したから。彼の前にこの石を手にしたのは、アメリカの大新聞『ワシントンポスト』のオーナーの息子エドワード=マクレーン氏、彼がこの石を妻に買い与えたんですね。
このマクレーン氏、実は「“ホープ”ダイヤとともにタイタニックに乗船して亡くなった」と言われていたのです。ここで、“ホープ”もしくは“碧洋のハート”がタイタニックと自然に(?)結びつくというわけ。実際には、彼は1941年まで生きていたということで、“ホープ”も海に沈むことはなかったのですけれど。
“碧洋のハート”と“ホープ”の微妙な関係はおいといて、ブルーダイヤモンドを軸にストーリーを展開させるなんて、なかなか粋なはからいではないかと思いますね^^。
|