イギリスの戴冠式用王冠の中央に輝く「黒大使のルビー」は、長い間ルビーと信じられてきましたが、実はレッド・スピネルでした。
14世紀、この石の持ち主はスペイン、グラナダの王アブ・サイド。しかし、彼は隣国カスティリアの王ペドロに暗殺され、石を奪われてしまいます。今度はペドロ自身、兄弟のエンリケに叛かれてしまい、フランスに逃亡。ペドロはそこで格好の援護者、イギリスの皇太子エドワードに会います。
皇太子エドワードの通称は「黒太子(ブラック・プリンス)」。その名のいわれは、戦場で黒い甲冑に身をつつんでいるからだけではなく、残虐な略奪行為で人々を震撼させたことにもよるのでしょう。
ペドロは黒太子に、エンリケを討つよう頼みます。多額の金と美しい”ルビー”を謝礼として。
エンリケはイギリス兵をひきつれた黒太子に討ち取られ、そして黒太子のもとにこのスピネルが贈られました。
それは、黒太子が殺した人々の血が閉じ込めれているかのような、すさまじく輝く真っ赤なスピネル。
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その他、ブルゴーニュ公シャルルの所有していた「三兄弟」というルビー、また英国王室の「ティルーム・ルビー」も実はスピネルだったということです。
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