「オルタンシア」は5面カットされた、20カラットの淡いピンクダイヤモンド。天然のピンクダイヤモンドといえば、極々小さな一粒でも希少価値を持つのですから、20カラットがいかに大変なものかが分かるでしょう。ガードルの縁からキューレットにかけてひびがありますが、それを補ってありあまるほどの美しさ、希少価値が認められています。
フランス革命後、この「オルタンシア」も、「ホープ」や「リージェント」とともに国有宝物庫から盗まれてしまいます。その一年後、ドゥペイロンという男が、ギロチンにかけれる際にある重大な告白をします。彼いわく、「屋根裏部屋にダイヤモンドを隠した」と。彼の告白通り、パリのレ・アール地区にある古家の屋根裏で、「リージェント」とともに、この「オルタンシア」が発見されました。あの世まではダイヤモンドを持ち込めないとあきらめた末の告白だったのでしょうか、不思議な運命に導かれて、「オルタンシア」は闇に葬られることを免れました。
発見されてからは、ナポレオンの肩章のモール留め金にセットされたり、皇妃ウージェニーの櫛飾りに飾られたりと、その圧倒的な存在感を誇っています。そして、ジョセフィーヌの継子でナポレオン3世の母でもあるオランダ王妃オルタンスのものとなり、「オルタンシア」の名で呼ばれるようになりました。現在は、ルーブル美術館のアポロン翼に展示されています。
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